ワシントンD.C.の100年コースに、何が起きているのか
アメリカの首都ワシントンD.C.にある老舗パブリックコース、イースト・ポトマック・ゴルフ・リンクス(East Potomac Golf Links)が、大きな岐路に立たされている。トランプ政権の内務省が前管理団体の契約を終了させ、代わりに著名コース設計家のトム・ファジオ(Tom Fazio)を起用。「国家的モニュメント」レベルの施設へと作り変える計画が浮上したことで、ゴルフ界の保存団体や地元の文化財保護機関と真っ向から対立する構図が生まれている。
1917年の設計が持つ価値
このコースは、ゴールデンエイジの名設計家ウォルター・トラヴィス(Walter Travis)が1917年に設計したもの。ポトマック川の人工半島上に広がる約220エーカーの敷地から、ワシントン・モニュメントや国会議事堂を望む絶景の中に、18ホールが設けられた。特徴的な「可逆ルーティング(reversible routing)」はセント・アンドリュース旧コースへの敬意であり、過酷な利用頻度に耐えるための工夫でもあった。
ウォルター・J・トラヴィス協会(Walter J. Travis Society)のロブ・ウルフ三世会長は、全18ホールのスケッチや詳細な地図、完成当時の航空写真など豊富な原設計資料が公文書に残ると指摘。「これ以上ない設計図がある」と訴え、忠実な復元を強く求めている。
ファジオ設計の懸念点
一方、ファジオ側は大規模な土地造成と再ルーティングを予定。慢性的な排水問題の解決や、現代のトップ選手でも試される難度の確保を理由に挙げている。トラヴィス特有の急勾配バンカーや可逆ルーティングの復活は「コスト・運営面で非現実的」とし、トランプ大統領が愛するというサクラの木の保護も方針として打ち出している。ファジオはGOLF.comの取材後に原設計資料を初めて確認し「参考にする」と述べたが、完全な復元には否定的だ。
法的対立と今後の行方
DCプリザベーション・リーグ(DC Preservation League)は5月、「歴史的財産に取り返しのつかない損害を与える」として緊急差し止め申請を提出。7月2日に次回審理が予定されており、連邦保存法のSection 106に基づく審査プロセスの欠如も問われている。
誰でも50ドル以下でラウンドできる希少なパブリックコースとしての役割、首都の歴史的景観の一部としての価値、そして黄金時代の設計を蘇らせる絶好の機会——これらが天秤にかけられている。
Strokeslabの視点
ゴルフアーキテクチャの議論は、しばしば「現代化 vs. 保存」の二項対立に収束しがちだ。しかしこのケースでは、原設計資料が豊富に残り、50ドルというアクセシビリティ、首都という象徴性が重なる。純粋なアーキテクチャ論としても極めて稀な事例であり、帰結は世界のゴルフ界が注視する先例となるだろう。
原設計資料が豊富に残る中で「完全復元は非現実的」とするファジオの立場は、アーキテクチャ論としても疑問が残る。50ドルで誰でも遊べる歴史的名コースが、政治的な「格上げ」の名のもとにどう変わるか、ゴルフ界全体が見守っている。
この記事の原文
GOLF.com: Trump Administration's Overhaul of D.C.'s Historic Muni Sparks Battle with Preservationists
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